"it"という語の

その慎ましい佇まいと、事後的に発見されるような何かが、好きだ。 " Let's call it love" とか "You can have it all" とかさ。 以前、とある傑物に教えてもらった動画。 あまりに素晴らしくって、泣けてくる。いかん、内省的になっとる暇はないのだった。

ましかば、まし。

HASAMI group。音楽としては非常に好きで、しばしばyoutubeで視聴してしまうのだが、この曲は、ちょっと、待ってくれよ、と思う。 ワンフレーズごとに、「ましかば、まし。」を挿入しなければ聴けない。それは、気恥ずかしさのようなものではない。むしろ、…

R.W.ファスビンダーの隠れファンであることについて。

はじめてみたライナー・ヴェルナー・ファスビンダー作品は『13回の新月のある年に』だった。 臓腑を抉られる気分に陥り、しばらく体調が悪くなったことを覚えている。 それ以来、少しずつほかの作品も見るようになったが、上記の作品だけはめったに他人に薦…

『プレーンソング』(保坂和志)覚書

ぼくは小説を読んでも粗筋が書けないし、想いだせないタイプの人間だが、この小説なら3行で書ける。 30男が、猫と競馬にはまり、同じように猫と競馬にはまっているひとびととの日常を語って物語は進行する。 中村橋のマンションに集ってきたひとびとともに…

風邪っぴきと終りの季節

風邪をひき、治ったと思い油断していたら、ぶり返しこじらせ、ここ二三日ベッドから出れずに居る。 紅茶に蜂蜜を阿呆ほど投入し、飲んでいる。からだは温まるが、おそらく風邪が治ったころには、からだに重みを感じるだろう。ベッドの中で特段することもなく…

中平卓馬『キリカエ』展に関する覚書

そこは30畳ほどの、奥行きのある長方形の、真っ白な空間であった。 四隅をピンで留められた写真たちがぶっきらぼうに並んでいる。草木。 ドラム缶から立ち上る火。 テトラポッドに打ちつける波。 日に焼けた男の路上で眠る姿。これらはまごうことなく、写真…

『わたしたちの夏』(2011 福間健二)について。

ポレポレ東中野で、『わたしたちの夏』という映画をみてから、きっかり五十日経っていた。その間、わたしは、毎日の生活を送り、詩を二篇書いた。ごく短いものを。 そうして、五十日後の十一月五日、今度は十三の第七藝術劇場で、ふたたび同じ映画をみた。 …

マドル・へディド

ほら、聴こえるね あの泉の谷から滲みだす さまざまな色のことばたち 煌めきながらばらばらに 散っていった無数の肉体 その かけらのなかを通過していく 衣擦れのような音が。 渇いてしまう、 ようやっと辿り着いた 名を与えられてはいないが いまだひかりの…

二〇〇六年 冬

五年前の冬になる。わたしは、講義をよくさぼった。ほとんどの教官が何を云っているのか分からなかった。なぜ、そのようなことに熱意をもてるのかが分からなかった。自分のなかの意識と法律の文言をすり合わせることがとてもできなかった。端的にいって、大…

バッド・エデュケーション(T.N.のために)

月の陰をゆさぶり 湿りを失ったおれたち の舌さきましろい欲望 のうえを ふたたび、ゆっくり 歩いて行く。 冷たい吐息が けっして 交じり合うことなく 球体の 昏い部分を曇らせている としても、だ。まだ生まれはしない 濡れそぼった三白眼 の奥で、 鳴り響…

離陸

冬の午後の 薄い光はきみを地上から数セン チ 浮上させた 離陸 コンクリの地面から 数センチ 離陸 裸のポプラ 寒さは無数の 音のつぶてとなり コンクリときみのあいだ で反射する 乱れ 乱反射 寂しさは高まる ことのない音のつぶてとなり きみをお家に 帰さ…

七月のこと

隣室で眠る友人の寝息と、近くの高速道を走る車両の音がこんな夜更け、他人の家にて混じりあう。 私は妙に目が冴えてしまい、携帯のディスプレイの灯りを頼りにこんな散文を綴ったりしている。友人の出してくれたポテチなどを齧りながら、ぼおっとあすの新馬…

出立

届かない まだ手を延ばして 相違えた指を配る ぼくたちは林道を象って 淵辺へと たくさんの 息吹を摘んだね その穢れをまとっても もう慌てないで みじかく、身近に 護っているから きみも知っている 隣町の水夫が 護っているから 穏やかに綴るおれの 薄い紙…

暇のためか

煙草を一時的にやめている。 離脱症状か、歩道を歩いていると、吸殻を拾いたい、 拾ってそのままシケモクに火をつけ、 吸引したいという思いが募る。 ので、おちおち外も歩けぬのだった。そうして、ちょくちょく小腹が減る。 煙草を吸わないとやたら、時間が…

劇薬

リスペリドンの内用液には、赤字で劇薬と書いてある。 書かれなくても、口に含めば、あまりの酸味と苦味のフレーバーが舌に突き刺さる。 そんなことを想い出した。

関西の雄、逝く

関西の雄、サッカーボーイ逝く。いまだ函館2000メートルの記録は破られていない。マイルCSでは二着馬の存在さえ掻き消したような圧倒的末脚。豪脚とはこの馬のためにあるような気さえする。しかし、ぼくは昭和最後の有馬記念を映像でみなおしたい。根っから…

ロスタイム

己れ、にだけ 忠実であろうとした女の 左腕は今朝 彼等の海へと 絡みついたままもげ その、断面からは黒く冷たい 叫びごえが鳴って ロスタイムの合図とする * あんたの絶望の浅瀬で いまにもうちは溺死しそうだ 確かなものはすべて 白く まるいパン皿のうえ…

リリィさん

リリィさん、今日もぼくたちの波止場で一羽の記号が息をひきとったね。 幾何学の身振りで生きながらえてきたきみのからだに 年老いた砂がまとわりつき 道行き、それは疾うにぼくたちの岸辺では役目を果たし終え 綴じられた〈 〉のほうから穏やかな〈 〉がま…

たまにこの映画のラストを無性にみたくなるときがある。

そして、漫画喫茶で小山ゆうを読みたくなる。

ハッピー・エンド

///軽やかさとは必ずしも乗り越えられる為だけにあるのではなく 黙することそれをひとつの命題としたあなたの背中に躓く/// こうして また、 崩れおちた 口に黒い 布切れ を被せ 冬の 街路に 棄てられた 喉もとから ひとつひとつ 半透明の 物体 を叩き…

写真を憎んでいたはずが。すっかり写メなど撮るようになり。

子供の頃から、写真というものが嫌いで仕方なかった。 憎悪の対象だった。 ひとがカメラを向けてきたときに、断るという対応がなかなかに面倒で、その勇気もないから、あいまいな表情で写ってる写真が、多分、なんらかの記念写真や、誰かの写メールなんかと…

峰という煙草がいつのまにか無くなっていたから。

私は煙草を吸わないので、真冬の屋外の空気に触れたとたん、その冷たさを煙と共にからだにしまいこんでしまおうという欲動を理解できない。 私は煙草を吸わないので、見知らぬ土地の見知らぬ公園のベンチに無目的に存することが、火のついた煙草をくわえるこ…

『ヒバクシャとボクの旅』(2010 国本隆史)に関する覚え書き

一昨日、在米被爆者の証言を扱ったロードムヴィー?である「ヒロシマ・ナガサキ・ダウンロード」(2010竹田真平)を劇場でみたのだが、この作品について語るとしたら、「不誠実」のひとことに尽きる。必ずしも、誠実さは作品の美徳ではないが。そして、わた…

間違った夏

1. 夏の夜がひとつずつ明け きょうもまた 薄ら笑いで迎えた なにが可笑しいのか 闇雲に過去を 終わらせてみたい と思った 断ち切るには じゅうぶんに 必死の顔つきだが ことばと技術が だぶついて 過去のほうから 笑い声と すすり泣きが 合唱しながら 近づ…

何故か、懐かしい

海+e/motion

さかしま に 決壊した真昼の いっさいの裂け目に わたしたちの、崩落した 白い希み が、滴り 直立した灰、の 凪いで 碧さ のきみは 等しく 舗道に轢かれて いる*短さで繁っていく碧い海の記号を(焦らすこ となく)囲い込んだぼくたち、の半生(その、 残 …

公開空地

園芸部でも ないわたくしが やつれたビニルホース でぶっぱなした冷水を ひと月おくれて のみ干し てゆく あの向日葵 に今日、白さの 灰が積もるすべて の氷花が いっせいに枯れ 名に乗る ことさえ、断念した 晩夏の氾濫沈んだ校庭の 野っぱら に寝転んでも …

口ずさむ詩(うた)は何だい?

一昨日書いた「食うべき言葉(赤羽より)」という文章に対して、幾つかコメントがなされており、また他所でも言及されているようで、自家中毒気味になるやもしれぬが、稿を改めて応答したいと思う。その際、「他所」での言及にも応じて行く点寛恕願いたい。 …

サマー・ヴァケイション

今朝がた夏を刻み終えた男の全身を漂白してベランダに干したところだと云う 熟すことも腐ることもなく ただ 秋がくればカサカサと鳴るだろう できることなら、血の匂いのしない図鑑をくれ 魚鱗を貼付けたせいで この夏を越せないなどというおまえの言い分が…

書を捨ててハローワークへ行く

仕事を辞めて、はや二月が経とうとしている。この間、欲の赴くまま本を読んだり、詩になりかけてなり損ねたようなものをひとつふたつ書いては破棄したりしている。昨日、旧友より電話があり、「どん詰まりの生活はどうか」と尋ねられた。翻って、問題は私は…