R.W.ファスビンダーの隠れファンであることについて。

はじめてみたライナー・ヴェルナー・ファスビンダー作品は『13回の新月のある年に』だった。
臓腑を抉られる気分に陥り、しばらく体調が悪くなったことを覚えている。
それ以来、少しずつほかの作品も見るようになったが、上記の作品だけはめったに他人に薦めたくなく、
結局、ファスビンダーの他の作品も他人に薦めるのもなんとなく気が引けるのだった。

大学一年の頃に、雑誌イメージフォーラムの『ファスビンダー研究』号を手に取って以来、
ずっと気になり続ける監督であり、俳優であったのだが。。

きょう、『来たるべきファスビンダー』というUSTREAMをみ、なんだかファスビンダーが好きであることをもっと云ってみても良いのかな、と思うようになった。再現映像や再現パラパラ漫画、再現朗読などにも度胆を抜かれ、また渋谷哲也氏をはじめとするトークも湿っぽすぎず、硬すぎず、かといって軽快といったものにはなりようもなく、素晴らしかった。

今後も、続く番組であるらしいので、また、再現映像やオマージュの映像、或いは詩!なども募集しているとのことなので、世の中の隠れファスビンダー・ファンは思い切って、参画すれば良いのではないだろうか。

http://www.ustream.tv/channel/fassbinder



最後に、昔書いた覚書をここに挙げてみる。ほんとうに、メモでしかないのだが。

『愛は死より冷酷』(1969 R.W.ファスビンダー)をみる。

ブルーノ、フランツ、ヨアンナ。
三人とも、どこか冷めきったやりきれない殺伐さを持った表情と眼差しをもっている。
ブルーノがフランツに時折むける、あの屈託のなさそうな笑みすら、
ギャング組織へと導くための、思惑のひとつだったのか、そうではないのか
は最後までわからない。

三人がミュンヘンの河川敷を歩く場面が好きだ。
フランツはひょろひょろとどこか剽軽な歩き方を続け、遊んでいる。
彼を挟んで、ヨアンナはフランツに応答しているような、していないような仕草を続け、
ブルーノはいつも通り、すらりと背筋を伸ばして、無駄のない動きで一歩先を行く。

三人の髪や服が、河川敷を吹く風に煽られている。

これは、単なる男二人、女一人の痴話げんかめいた物語ではない。
むしろ、それとは正反対に、それぞれの余りに乾ききった思惑が錯綜していく。

ブルーノははなから目的をもって、フランツに近づいてことが明らかになり、
また、銀行強盗の計画は、ヨアンナの土壇場での裏切りにより失敗し、ブルーノはあっけなく命を落とす。

ぶっきらぼうに車中から捨てられた、死体をよそに、車は疾走し、
フランツはヨアンナに呟く、「売女め」と。

白い壁をバックに、カメラに視線をむける役者たちの、ざらついた表情。

最低限の台詞と芝居、時折挟まれる長回しのショットによって、物語は駆動していく。