楠の傍らにきみが眠る

ぼくたち、はあまりに眠ってばかりだ/った
眠りながら朝食 をたべ 眠りながら家 を
でて 眠りながら歩き続け/ている 「常に
眠っていれば疲れることを知らずにすむ。」
と云いだしたのはぼくのほうだったからきみ
には何の責任 も ない普段なら そんな怠
惰をきみは許さないだろう に きみがぼく
に同調し/たのはぼくたち、が
     
     もう二人で何かを生み出すことに
疲れ果ててい たから/で 眠りながら 先
へさきへと急 ぐぼくはきみが「眠りながら
眠りにつきたい。」と云ったとき何も思わな
かったそれも当然、の
      
     ことだと首 肯したのだったきみ  
は大きな楠に凭れて眠り の中の眠りにつき 
おやすみということば がぼくときみのあい
だで初めて交わさ、れ 


(ぼくたち、にとっては眠っていることなど
当たり前すぎてあらためて 眠りの挨拶など
する必要はなかったの/だ。)


ぼくは独りで眠りながら変わらず歩み続けて
い た が独りで眠る行為は味がよくわから
ないそ してこの冬が来たのを契機に起きて
しまっ た(ぼく/は た だ起きて顔 を
あらい歯 をみがいたりもすることからは 
じまる生 活をはじ、め) 


眠り、の中できみとは二重に隔てられ楠の傍
らに行ってみてもきみの世界に通ずる手だて
がなにひとつないことを知りそれ、以来ぼく
は一度足りとも眠らずに過ごしつづけている