Entries from 2011-11-01 to 1 month

中平卓馬『キリカエ』展に関する覚書

そこは30畳ほどの、奥行きのある長方形の、真っ白な空間であった。 四隅をピンで留められた写真たちがぶっきらぼうに並んでいる。草木。 ドラム缶から立ち上る火。 テトラポッドに打ちつける波。 日に焼けた男の路上で眠る姿。これらはまごうことなく、写真…

『わたしたちの夏』(2011 福間健二)について。

ポレポレ東中野で、『わたしたちの夏』という映画をみてから、きっかり五十日経っていた。その間、わたしは、毎日の生活を送り、詩を二篇書いた。ごく短いものを。 そうして、五十日後の十一月五日、今度は十三の第七藝術劇場で、ふたたび同じ映画をみた。 …

マドル・へディド

ほら、聴こえるね あの泉の谷から滲みだす さまざまな色のことばたち 煌めきながらばらばらに 散っていった無数の肉体 その かけらのなかを通過していく 衣擦れのような音が。 渇いてしまう、 ようやっと辿り着いた 名を与えられてはいないが いまだひかりの…

二〇〇六年 冬

五年前の冬になる。わたしは、講義をよくさぼった。ほとんどの教官が何を云っているのか分からなかった。なぜ、そのようなことに熱意をもてるのかが分からなかった。自分のなかの意識と法律の文言をすり合わせることがとてもできなかった。端的にいって、大…

バッド・エデュケーション(T.N.のために)

月の陰をゆさぶり 湿りを失ったおれたち の舌さきましろい欲望 のうえを ふたたび、ゆっくり 歩いて行く。 冷たい吐息が けっして 交じり合うことなく 球体の 昏い部分を曇らせている としても、だ。まだ生まれはしない 濡れそぼった三白眼 の奥で、 鳴り響…