暴風警報のエレジー

(モウ、充分ダッタ。)


密通する風たちの
うめき声をすべからく
黙殺する


―――「頭、痛うわいや」
   「それ」
   「眠たいわいや」
   「それ」
   「煙草とか吸いたない、いっちゃんの理由」
   「それ」


詩とか書きたない、いっちゃんの理由


(荒レテイル、外。)


知らない女子校生の立つ、街路
夏なのに
冬服だ 色が
知らない制服を着ている、ふたり
どぎつい
風が膚をうつ
ざんばら ざんばら 暴風警報
おれの舌を揺らす
まただ 
口内炎に触れてしまった
まるで洪水みたいやね


元町のファミレス
二〇一〇年のオークス
がドラマと賭け金をどぶに捨てさせ
窓の向こう
(はるか!)(はるか!)
(かなた!)(かなた!)
(脈打つ!)(脈打つ!)
府中にて架空の絶対女王が君臨する
ターフのうえを小便とまがう 
にごった涙が降り注ぐ


(キレイ、ダネ。)


―――「星々のようだ」
   「まるで早朝の
    どぶのなかで 煌めく
    光のように」


現代の風紀委員に
迫害される夢をみた 街を追われて

(あいつらの)書物に油性マジックを!
(あいつらによる)石の礫をなげつけろ!
(あいつらのための)枯れ葉を踏む権利を奪え!

胸躍る、迫害
心からの、蹂躙


三流のサディストの 鞭ほど痛いもんはない


茶店の天井から 
したたり落ちるエレジー
せっかく書いた ノートが汚れた