間違った夏

1.
夏の夜がひとつずつ明け
きょうもまた
薄ら笑いで迎えた


なにが可笑しいのか
闇雲に過去を
終わらせてみたい
と思った


断ち切るには
じゅうぶんに
必死の顔つきだが
ことばと技術が
だぶついて
過去のほうから
笑い声と
すすり泣きが
合唱しながら
近づいて
くる


こうなったらもう
とか云って
非常口を探している



2.
冷水を飲み干し
今夜も
こんがらがった
青い糸だけの
世界を想像する
おまえはまただ
胡座のかきかたを
間違えて
さいしょから
骨のありかを
確認しだす
忘れてしまった
香りとかで
卒倒できるのだから
おれとはそもそも
仕組みが異なるのだろう
見違えたように
夏の夢を
やりなおせば
そこには
悪意が香っている
悪意がつきれば
わたしたち、滅んでしまう
なので
腕と腕を組み
指先に
血文字を貼付けて
行進するのだ
滴る音楽が
遠くのほうで
鳴っていて
わたしたち
とは関係のない
終曲がはじまった