離陸


冬の午後の 薄い光はきみを地上から数セン
チ 浮上させた 離陸 コンクリの地面から
数センチ 離陸 裸のポプラ 寒さは無数の
音のつぶてとなり コンクリときみのあいだ
で反射する 乱れ 乱反射 寂しさは高まる
ことのない音のつぶてとなり きみをお家に
帰さない 冬の午後の迷子だ 無数の高まる
ことのない音 を譜面に記す作業 きみが帰
還するいつか 僕の作業は 留まることなく 
記す作業は 滞ることなく 冬の午後の 迷
子のきみよ 応答せよ 無音を許さずに 歩
行するコンクリの数センチうえを 裸のポプ
ラ きみで満ちた楽譜 白い紙面から数セン
チ 浮上させて 離陸 音符たちの離陸 き
みの肉体 きみの足 きみの指 燃してしま
うだろう僕は 暖をとるため 燃してしまう
だろう僕は さようなら 冬の午後の迷子の
きみたち  


                              2008年4月