バッド・エデュケーション(T.N.のために)
月の陰をゆさぶり
湿りを失ったおれたち
の舌さき
ましろい欲望
のうえを
ふたたび、ゆっくり
歩いて行く。
冷たい吐息が
けっして
交じり合うことなく
球体の
昏い部分を曇らせている
としても、だ。
まだ生まれはしない
濡れそぼった三白眼
の奥で、
鳴り響いている。
*
「ひかりを瞳のうえに
刻めるのか、そのうえ」
慌てて 誤った独白を用意し
急いで 焼け残った椅子をならべる。
しゃがんだ少年が
腕を伸ばすも、
「金輪際、出合うことなど」
渡り廊下の崩落。
*
冷えた
コーヒーの色は明るみ、
この冬は
あまりに、邪気のない唇だ。
紫のスェータに身を包み、
時代の、
リールを燃していく。
(その姿こそが。)