バッド・エデュケーション(T.N.のために)

月の陰をゆさぶり
湿りを失ったおれたち
の舌さき

ましろい欲望
のうえを
ふたたび、ゆっくり
歩いて行く。 

冷たい吐息が
けっして
交じり合うことなく
球体の
昏い部分を曇らせている
としても、だ。

まだ生まれはしない
濡れそぼった三白眼
の奥で、
鳴り響いている。

「ひかりを瞳のうえに
 刻めるのか、そのうえ」

慌てて 誤った独白を用意し
急いで 焼け残った椅子をならべる。

しゃがんだ少年が
腕を伸ばすも、 

「金輪際、出合うことなど」

渡り廊下の崩落。

冷えた
コーヒーの色は明るみ、
この冬は
あまりに、邪気のない唇だ。
紫のスェータに身を包み、
時代の、
リールを燃していく。

(その姿こそが。)