マドル・へディド


ほら、聴こえるね 
あの泉の谷から滲みだす
さまざまな色のことばたち 
煌めきながらばらばらに
散っていった無数の肉体 その
かけらのなかを通過していく
衣擦れのような音が。 

渇いてしまう、 
ようやっと辿り着いた 
名を与えられてはいないが 
いまだひかりの残る 
ことばの裾野から
拾われた椅子のもとへ
ゆっくりと 燃えてゆけ。 

次第に明るみだけが
喉もとを照らしだし ひりひりと
貼付いていた声たちの在り処、
ひとつまたひとつ降り積もって 
少しばかり湿り気を残したまま
土塊のうえ、
折れそうに分裂する。

愚かで、いつものらくらしていた
わたしたちの生誕の日を祝うなら
ずっとずっと奥のほう  
あなたが想像するなかで
もっとも涼やかな風の吹く
真白い洞のなか、 
ちいさなロウソクの炎を
そっと吹き消してくれ。 

息をきらし、
あたらしい 果実の響き 
遡行する一瞬 よろめくからだで 
袂を分かつわたしたちの 息遣い
だんだんと 荒れてゆく。 

水底のほうから さらに明るみ、
導きの灯の、撃墜。